彼の翼の名は西風(Zephyr)――

えー、初っ端から電波な話をいたしますが、串子には翼が生えております。
いちいち比喩と断る必要もないんですが、愛車、ゼファーのことですね。
Zephyr……ギリシャ神話でいうゼピュロス、擬神化された西風に語源を発し、「やわらかな西風」を表す詩語でもあります。


もっともゼファーに限らず、バイク乗りには己がバイクが翼のように思えるものですが。
人馬一体となって路を駆けるその様は、人の域を越え、機械の域を越え、まるで別の領域を飛翔するかのようです。
速度に関わりなく排気量にも関わりなく、スロットルを開けば、あたかも鳥瞰で世界を見はるかす場所に――。
あるいは己と、あるいは愛車との対話を通して、無比の地平を目指すかのような境地に、足を踏み入れてみませんか?


まあこんなことにかけてはバイク漫画家さんたちの方がよほど詩人でして、一色登希彦先生やら東本昌平先生やら山口かつみ先生がずっと魅力的に語ってくださるんですがね。
「原動機付き二輪車――オートバイ――。オートバイに乗る事は、心の原動機に火を入れる事。オートバイに乗る事は、生きる事そのもの。古今東西、オートバイに関わるあらゆる人々を描く、オムニバス・ストーリー。 」『モーティヴ』アマゾンのレビュー。
「バイクは乗る者が魂のある限り生きる機械となり……(中略)人はバイクの脳となり 神の領域へ足を踏み入れる……」『ナナニイ』山口かつみ


原付?関係ない。それがあなたの翼で、もう、どこまでもいける。
バイクはいいですよー。
あるいは海辺を、あるいは山の尾根、エンジンの鼓動は場所を問わず、速度を問わず人の心を捉える何かを持っている。
串子はそう思うのです。