お別れ


とうとう今日、カメラが手元を離れていきました。
このブログの立役者だったカメラ、
S3Pro。
今から6年近く前に発売されたこのカメラ、一年周期のデジカメ市場の中、当然今となっては厳しい操作性でした。
AF、ファインダー、メモリ処理、どれをとってもヘビーでスローで精度が低く、電池は食うわ……露出は二分の一段しか調整できないわ…。
Proと名につけど、今ではボディが5万円でも「お勧めしない」と書かれるほどのレベルのカメラでしかありません。


ただしCCDと画像処理だけは別です。これだけは6年前の時点で、ほぼ35mm版デジカメの水準ラインにあったといえるでしょう。
5D、1Ds、D3、D700、このあたりに肩を並べられるだけの画を出せたカメラは、APS-CではK-7、D300、そして後継機のS5Proくらいではないでしょうか。
特に発色は、自分のつたない腕でさえ自明のレベルのものがあったのではないかと思います。


このカメラからは大変多くのことを勉強させてもらいました。
マニュアル露出が身についたのもこのカメラのおかげですし、猫の撮り方、風景の撮り方、人の撮り方…。
初心者には難しいなんて言う人もいますが、もちろん初心者向けではないにせよ、本質的に写真、というところに近づけるカメラかな、と。
それは今の動画機能をつけたり、ライブビューモードをつけたり、はてはガイドモードを装備(まったく悪いとは言わないが…)したエントリー機とはまったく違った意味で、
純粋に写真の質を考えられるようになるカメラに違いないですね。
写真の初心者にはむしろお勧めしたい。
プログラムモードだって一応ついています。
まったくのところ、「難しい」カメラではないです。機械式カメラのほうがよほど難しい。
ニコンのボディにFUJIのCCDというだけで、見事に本質をつかんでいると感心できるレベルですね。


余裕があれば一台買いたいですが、やはり仕事という観点をある程度考慮すると選択肢は後継機のS5Proといわざるを得ません。
そのS5も発売3年、新しいといえるスペックではありません。
とはいえ、コストと画で対抗できるカメラが不在なので、今でも現役足りえます。
問題は四つ切から上のプリントでは解像感が厳しいことで、5DMK2やD3Xや1Dsを持ってこないと満足できるところまでは行かないのではないでしょうか。
もっとも、大きく伸ばしてあるのにルーペで見るような人は、写真の見方を知っているのかな…とは思いますが。


そしてレンズ。
写真はレンズで決まります。
そして、AF-S 28-70 F2.8Dは、「決めて」くれたレンズでした。
もちろん新しい24-70がAF速度、大きさ、重量、解像、すべてにおいて上ですが、そういう問題でもなく、
写りと色、ここはこのレンズでよかったと思う点ですね。
描写の質はほとんどズームの域は脱していたのではないでしょうか。
もちろん、これも、今後買うとなれば後継の24-70でしょうが、できるなら必ず所有したいですね。
24mm、28mm、35mm、50mm、60mm、70mm、それぞれこれだけの写りの単焦点を集めることに比せば、このレンズそのものがいかに素晴らしいものだったか、正当に評価できそうです。


というカメラがいなくなって、今大変落胆しています。
借り物とはいえ喪失感が大きすぎますね。


あまりのことにフィルムカメラを本気で考えていますが、やはりここは一ヶ月、もしくはそれ以上辛抱して決断を下さなくてはいけないのではないかな。
しかし、今では使い慣れたカメラなしで一ヶ月とかそれ以上耐え切れるものなのか、自信がなかったり…(笑)
間に合わせで買うと必ず後悔しますからね。


さて、とうとう会社に籍もなくなりました。
こんなときこそ、手元にカメラがあれば……。
理性的ではないとはわかっていても、なんだか眼球をどこかになくしてしまったような、変な気持ちです。


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