成人するまでに読ませたい、10冊の本


お疲れ様です、串子です。


おかげさまでどうやら働くことができるかもしれません。
例の、パートでライン作業のお仕事です。
今日ちょっと契約の話とか聞きに行ったんですが、驚きの連続。
何に驚いてるかというと、これまでとの待遇の差に(笑)
「タイムカードがある」「時間外手当がある」「契約書がもらえる」
通勤手当がある」「有休がある」「休憩時間がある」
すげー。
当たり前のことなんだろうけれどすごいことなんですよ。
パートでこれだもん。
そういうのが全くなかった正社員のカメラマン時代はなんだったのかと思う。
それでもって4週8休なのに手取りがほとんど一緒。
これまではリアルに時給360円くらいでしたからね。


ちょっと前に「20代に読んでおくべき本」ランキングがありましたね。
やっぱり「もしドラ」!……「20代で読んでおくべき本」ランキング
上のリンクを踏んでいただければ、ランキングを見ることができます。
真に受けるレベルではないな、というのが個人的な感想。
「20代」に読んでおく「べき」本が一冊も見当たらない。
「The Catcher in the Rye」「竜馬がゆく」あたりは読んでもいいだろうけれど、読むべきって言うほどの必要性は全く感じません。
というかどちらも中学校までに読んでいるだろう、常識的に考えて(笑)
自己啓発書やビジネス本の類をこういうランキングで真剣に推す人を自分はあまり好きになれない。
吉川英治宮本武蔵を座右の書にしてそうな雰囲気が。
五輪書に学ぶ経営学(笑)とか、孫子に学ぶビジネス戦略(爆)とかをありがたがってる類の気持ち悪さがある。
五輪書とか孫呉の兵法に親しむのはいいんですよ。
自分も学生時代は孫子呉子を読みましたし、そこから教訓を学ぶのも悪くない。
でもそれをバイブルにとって啓発本を書こうとか、読もうというのは自分の理解を超えてる。


しかしまあ、上のリストでは日本人の程度が知れる、非常に恥ずかしいランキングだ……。
まともな人間なら恐らく正視に耐えるまい。


というわけで……

自分の子どもが成人するまでに読ませたい10冊の本をまとめてみました。
ちなみに自分には子どもはいません。
悪しからず。
要するに「10代に読んでおくべき本」ですね。
ランクは順不同です。


・「Walden(ウォールデン 森の生活)」Henry David Thoreau
・「光あるうち光の中を歩め」Lev Nikolajevich Tolstoj
・「The Holy Bible(聖書:ジェームズ王欽定訳)」King James Version
・「Das Kapital(資本論)」Karl Heinrich Marx
・「Sein und Zeit(存在と時間)」Martin Heidegger
・「荘子」荘周?
・「方丈記鴨長明
・「善悪の彼岸/道徳の系譜」Friedrich Wilhelm Nietzsche
・「What is Man?(人間とは何か)」Mark Twain
・「Tagebuch der Anne Frank(アンネの日記)」Annelies Marie Frank


ざっとこんな感じかな。
文学的立場からは選んでいません。
文学的な立場から選んでいくととてもではないが絞れませんし。
軽く説明を入れていきましょう。
一冊目は森の生活。
H.D.ソローで、ウォールデン湖のほとりの生活を描いた本です。
彼の思想家の随筆は生き方を考えるのに助けになるかと思いますね。
「人はなんで生きるか」とはトルストイの短編でしたが……。


そのトルストイからは「光あるうち光の中を歩め」短編です。
物質の欲望や世俗的な価値観といったものに対して、精神の充足や宗教に対する認識といったものを考えられるでしょう。
同じ著者の「イワン・イリッチの死」も良い本です。
というかトルストイはいいです。
正教会から破門されながらも、彼は真の意味で生粋のクリスチャンでした。


続けて聖書。
ジェームズ王欽定訳は英語です。
辞書があれば十代でも読めるでしょう。
信教の相違に関わらず読む価値のある随一の本です。
ただし、解釈の偏っていない手引書を探すのは難しいだろうな。
清教徒的な見地のものがあれば、ある程度純粋さが保障されるでしょう。
見つからないだろうけど。
こればっかりはなんとも難しい。
カトリックを否定するわけじゃないんですが、純粋な立場で聖書に触れるにはよそからの混ざり物があまりにも多すぎ。


で、資本論
これはある程度経済のしくみに関心を持った状態でなければ理解するのは難しいかと。
十代の後半のほうが望ましいと思います。
前提となってる経済学を知っていないとね。
思想書のなかになぜ学術書なのか、といいますと、
経済学は人文学そのものだからです。
計量経済的立場から言ってさえ、経済学は価値と人間存在を考える学問ですし、
経済学の目的は人類社会の幸福にあるからです。
資本主義と共産主義、という20世紀を象徴する二項対立、そして脱構築を考える経験は、必ずその人の財産になるでしょう。


存在と時間ハイデガーによるこの本はしかし、やはりそこに至る文脈を知っていなければ価値が認識できないかもしれないですね。
存在するということの規定に関しては特に、それ以前にコギト・エルゴ・スムがあったわけで。
自己の存在までも疑って、時間の非連続性を考えて、とそういう経験は十代のうちに絶対に必要だろう。
それもぜひ、「論」に対する立場で読んでもらいたい。
現代、「論を研究する人」は山ほどいるけれど、「論ずる人」はそういない。


目先を変えて「荘子
でもこれが実質的には目先を変えていなかったりするから深いですね。
胡蝶の夢があまりにも有名すぎる感がありますが、全体を通して読む価値があります。
意識と観念だけでなくて、無為自然ということの意味とか。
純粋に読み物として価値ある本でもあります。


方丈記」うーん、日本のものも入れなきゃなと考えていたらこれになってしまいました。
徒然草でもよかったけれど。
というかどっちも読まなきゃ。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて……」
知らない日本人はいないでしょう。
言ってしまえば無常観ですが、無常観という単語よりよほど美しく心を揺り動かすのではないでしょうか。
そういう価値観の上に侘びと寂びであったり、散る桜であったりといった審美眼を育んで欲しいものです。


善悪の彼岸/道徳の系譜ですが、実は自分は道徳の系譜学の方は読んでいません。
ただ、内容は知っていますが。
ニーチェの書いたもののうちどれを勧めるか、あるいは勧めないかというのは微妙な問題です。
とにかく全部読む、でもいいですけれど、真面目に理解して読んだら発狂してもおかしくないですから。
善悪の彼岸は読んでもよいかと思います。
似非倫理や通念的善に惑わされない目というのが必要なことはよくある。
善悪を絶対的価値観としないことは、ある意味では不幸だけれどもやはり理解する価値はあるだろう。
なんとなれば、善悪の知識の木の実を食べたのは、そして自らを恥ずかしんだのは、最初の男女ではなかったか。


マーク・トゥエインから「人間とは何か」
「トム・ソーヤー」「ハックルベリ・フィン」など児童文学が知られたマーク・トゥエイン(ペンネーム)。
幼少のみぎり「ハックルベリ・フィン」にはまったなあ。
さておき、「人間とは何か」はずっと真面目な思索であって、まさしく読む価値のある一冊になっています。
人間が自由意志などない、ただの機械であるという論旨を広げる老人と青年との対話体。
今風に言えば台詞系ですね。
読み終わったとき、人間とはなんだと考えるでしょう。
人間が果たして人格的な存在なのかどうか、というのは、
「自分とは何か」という自我の問いを内包するがゆえに非常にシリアスなテーマです。
いわゆる必読書から外せない本ですね。


最後の一冊になりました。
アンネの日記」これだけ他の推薦書と毛色が変わってますが、10代、それも前半までに読んでおきたい一冊。
ホロコーストについての知識は必要。
これに関しては説明はいりませんよね。
映画になりますが、「ライフ・イズ・ビューティフル」も一緒にお勧めしたい。


自分が十冊選ぶとしたらこんな感じです。
20代までに、ということだけを考えて選んだラインナップになります。
実際に自分もほとんどを20歳までに読んでいます。
読ませたい詩集とか、読ませたい小説とかはまた別の話。(山ほどあるので……)
基本的には思想書を中心としています。
もちろん、20歳以上の方でも読む価値が十二分にある本だけを選びました。
小難しいことはないです。
自分の子どもにビジネス啓発書の類を読ませたいとは全く思わないけれど、
最低限何のために生きるのかを考えてから死んで欲しい、と痛切に思います。
「20代で読んでおくべき本」に怒りを覚えての10冊リストでした。
読者の皆さんもお勧めの本がありましたら教えてください。
もしも仕事が始まるとブログ更新も徹底できないかもしれませんので、ここであらかじめお知らせしておきます。